ふくしま市場公式アンバサダー企画 第四弾

選抜された福島牛の9割が「福粕花(ふくはっか)」に ──酒粕で育つ新ブランド牛誕生の裏側を発見!

福島県産品のおいしさの秘密。
その答えとなる“つくり手の努力”は、普段なかなか知ることができません。
「生産現場を見たい」「生産者さんの声を直接聞きたい」──
そんなふくしま市場公式アンバサダーの想いに応え、今回向かったのは福島県・天栄村。
酒粕を食べて育つ新ブランド牛「福粕花」を手がける 池田農場、
世界一の米と称されるお米「ゆうだい21」を育てる吉成農園を訪ねて来ました。

▲ 池田農場
▲ 吉成農園

福粕花 ふくはっか にまつわる、あの日の衝撃”

11月の天栄村は気温10℃前後。
中通りと会津の境に広がる山あいの空気は澄みきり、冬の気配を静かに感じつつ
行きの道中──

「ローストビーフの柔らかさはもちろん、醤油やソースがいらない味。今まで食べてきたお肉の中で一番美味しかったです。」

前回、ふくしま市場アンバサダー企画 第三弾。神奈川・日吉のイタリアン「アクイロット」で「福粕花」ローストビーフの美味しさに感動したアンバサダーの岡田さんとまいらぶさんは、盛り上がりました。 実はその“衝撃の美味しさ”を生んだ牛こそ、いま向かっている池田農場で育てられたもの。その“原点”を確かめるべく、池田農場へ向かいます。


迫力に息をのむ──池田農場の牛舎へ

この日案内してくださったのは、美土里耕産 代表取締役社長・安達正則さん、生産事業部 次長・田村洋基さん、そして池田農場の三島木寿雄さん。

まいらぶさん:「わあ、大きい……近い……!こんな近くで見るの、初めてです。」

間近で見る黒毛和牛の迫力と同時に、牛舎の清潔さと空気の軽さにも驚かされます。
池田農場では約320〜330頭の牛を肥育しており、その約6割が黒毛和牛の「福島牛」です。「福島牛」は美土里耕産から預かった子牛を受け入れ、約2年の歳月をかけて丁寧に飼育しています。
こうして大切に育てた「福島牛」の中から、目利きで選抜し、新ブランド 「福粕花」 へと磨きあげていきます。
この選抜された「福島牛」の内、肉質等級が「5等級」となり「福粕花」として認定されるのは驚異の9割
池田農場の、誇る品質の高さでもあります。

▲ 左から:三島木さん、安達さん、田村さん

「福粕花」とは ── 4年かけて生まれた“福島らしい”ブランド牛

なぜ“酒粕”なのか?

2024年12月の正式デビューに至るまでの道のりを伺いました。

安達さん:「「福島牛」は長く風評の影響を受けてきました。一方で、福島は今年も全国新酒鑑評会で金賞受賞数日本一となるほど酒蔵が多い。課題だった酒粕の廃棄や活用に着目し、福島県や全農福島とともに“福島らしい価値を持つブランド牛づくり”を始めたのが「福粕花」です。」

2021年の開発初期から試験に協力してきたのが池田農場で、「福粕花」の誕生を支えてきた“パイオニア農場”でもあります。

“90日×100g” ── 美味しさを科学で証明

ブランド化の鍵となったのは、酒粕を与える期間と量。

安達さん:「『60日×200g』『90日×100g』など条件を変えて何度も何度も試験を重ねました。」

その結果、出荷前の90日間に1日100gの酒粕を与えた牛がもっとも甘く芳醇な香り(ラクトン類)を持つ肉質になることを福島大学の分析で証明。 “なんとなく美味しい”という感覚ではなく、科学的な根拠に基づいているからこそ、必然的においしくなる。それが「福粕花」です。

出荷前に落ちる食欲──だから“酒粕”が効く

牛は、出荷が近づき体が大きく仕上がってくると、消化器にかかる負担が大きくなることや、代謝の変化から、どうしても食欲が落ちる時期が訪れます。特に仕上げ期はたくさん食べてほしいタイミングのため、この“食べ渋り”は生産者にとって大きな課題です。
そんなときに力を発揮するのが、「福粕花」の“おいしさの決め手”となる 酒粕パウダー。
元々かたまり状の酒粕を65℃以下でゆっくり乾燥させ、ほぐしながら粉状にしたオーダーメイド品。手間をかけて作られた、特別なパウダーです。酒粕パウダーの香りを確かめさせていただきました。

まいらぶさん:「甘酒みたいないい香り!」

三島木さんが餌に混ぜると、その香りに誘われた牛たちが鼻をクンクン寄せてくるほど。酒粕は牛にとっても魅力的な“香りのごちそう”で、落ちやすい食欲を支えてくれる存在です。しっかり最後まで食べ切ってくれることで、結果的に肉質の向上にもつながるのだといいます。

\耳だけに、、、耳より情報/

牛の耳についている“黄色いタグ”の正体

案内していただいたのは、体重約320〜330kgほどの子牛。耳についた黄色いタグが目を引きます。

安達さん:「これは“耳標(じひょう)”。個体識別ナンバーです。この番号で牛の生産履歴を検索する事ができます。」

子牛の頭をなでながら安達さんが教えてくださいました。 牛舎の柱には「肉牛飼養管理板」が掲げられ、父・祖父の血統、体重、取引価格まで記録。まるで“牛の家系図”のようです。

牛に「名前」がある?

岡田さん: 「それぞれの牛は、普段どんなふうに呼んでいるんですか?」

三島木さん:「実は、すでに名前があります。お母さんに種付けした段階で、血統書に個別の“名号(名前)”がつくんですよ。“太郎”や“はなこ”のように。」

名号にはルールがあり、オスは漢字、メスはひらがな。意外な決まりに、アンバサダーからは感嘆の声が上がりました。

「丸々太っている牛=おいしい(A5等級)」ではない!?

牛舎の奥には、出荷直前の黒毛和牛が並びます。酒粕を食べ終え、体重800〜900kgほどに育った姿はまさに迫力満点です。

岡田さん:「すっごい……体つきが全然違いますね。」

A5等級の肉質と認定されるかどうかは、最後の最後まで分からない。

いくら餌として酒粕を与えていても、出荷前の90日間の段階では誰にも予測できません。肉質の“等級”は、と畜した後の枝肉を見て初めて判定されるのです。安達さんは言います。

安達さん:「でもね、“良い等級になりそうな牛”は、ある程度見れば分かるんですよ。」

その一言に、アンバサダーのみなさんは思わず前のめりになりました。
そこで、クイズです。

Q.クイズ

最も高い評価を受けそうな「福島牛」は3頭の内どれ?

クイズの答えは…

アンバサダーのみなさんの視線は、“丸々して体の大きな左の牛(①)”へ集まりました。
正解は──
一番右(③)。

三島木さん:「右の牛(③)は、バチッと決まりそう。」

三島木さんが、見分けるポイントを解説してくださいました。

三島木さん:「大事なのは牛の“肩幅”と“背中の平らさ”、それから正面から見たときの形です。一番立派に見えても、必ずしも高い評価になるとは限りません。背中がしっかり平らに張っている牛ほど、肉質が良い傾向にあります。」

“丸さ=良い肉質の牛”とは限らない──。
プロの視点に、アンバサダーも思わずうなずきます。

生産者の想いがつくる「福粕花」というブランド

訪問の終わりに、三島木さんが思いを聞かせてくださいました。

三島木さん:「牛舎管理のほとんどを一人で担っているので、表に出る機会が多くありません。だからこそ、現場を見てもらえるのは本当にありがたいんです。何をどう頑張っているのかは、来ていただかないと伝わりませんから。今日のことをぜひ発信していただけたら嬉しいです。」

その言葉には、牛と向き合う日々の積み重ねへの誇りと、未来につなぎたい真っ直ぐな想いが込められていました。「福粕花」のおいしさは、生産者が重ねる“見えない努力”によって支えられている──。
今回の訪問は、大切に育てられる「福粕花」の生育を間近で見られた特別な時間となりました。

\ふくしま市場で販売中/

震災後、“絶対に安全なお米”を証明してきた吉成さんの挑戦

天栄村で最高峰の米づくりに挑み続ける 吉成農園・吉成邦市さん。
10ヘクタール──東京ドーム約5個分の広大な田んぼを管理し、日々米づくりに向き合っています。

吉成さん:「震災のあと、お米の安全性について確認を求められる場面が多かったんです。」

その経験が、吉成さんが現在の“徹底した米づくり”を続けるきっかけになりました。土壌肥料学会・原子力研究機構・産総研と連携し、“放射性物質を移行させない土壌”の研究を継続。12時間に及ぶ厳しい検査で「検出せず」を積み重ねてきました。
さらに、震災当時には水路600か所に不織布を設置し、水に溶けるセシウムを除去する作業を続けたことも明かしてくださいました。
こうした努力の継続が、吉成さんの作るお米の“安全性”と“美味しさ”を支えています。

▲ 国際コンクールで受賞した金賞の賞状を見せてくださる吉成さん

コンクールに勝ち続けるための挑戦は止まらない

吉成さん:「認知されるためには、やっぱりコンクールで金賞を取り続けることだよね。」

吉成さんが育てる「ゆうだい21」は、国内外最大のお米のコンクール「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で3年連続金賞を受賞。今年もノミネートされており、受賞すれば4年連続金賞という快挙が目前に迫っています。
そして来年から3年、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の開催地が福島県に決定。

吉成さん:「この3年間は本当に勝負です。」

吉成さんが、福島県でのコンクール開催を誘致した意味がうかがいしれました。吉成農園は福島県での米作りの認知と品質の高さを広めていく挑戦を続けています。

“漢方農法” “スマート農業”がつくる圧倒的な食味

吉成農園では、化学肥料や農薬に頼らない“無農薬の米づくり”に取り組んでいます。除草や防虫には※紙マルチを活用し、肥料には漢方薬の煎じ滓(かす)を使用。さらに、微生物の働きを促すため、ミネラル豊富な岩石を糖蜜で固めた、黒蜜のような天然素材を加えることで、土の力を最大限に引き出しています。
また、経験や勘だけに頼らない。品種ごとの栽培方法、味・香り・食感を記録し続ける──まるで研究所のようなデータ管理も、美味しさを支える柱です。
設備も一級品。
高性能コンバイン、GPS(RTK)搭載のトラクター、乾燥機、色彩選別機、精米時の温度を抑える空調設備…。
そして吉成さんは、少し照れながらこう話してくれました。

吉成さん:「僕は“お米の変態”と言われてます。毎年収穫したお米の品質データを全部取って、その年によって肥料も変える。“今年はこれとこれを組み合わせたらどうなるかな?”ってね。肥料の掛け合わせは無限大で、来年の構想がもう大変ですよ(笑)。」

吉成さん笑い混じりの言葉の裏には、その姿勢からは迷いのない情熱と揺るぎない探究心がありました。

※紙マルチ:雑草の発生を抑えたり、地温を保ったりする効果がある。再生紙を原料とした生分解性のシート。
※RTK:基地局と移動局の2点で同時に衛星信号を受信し、位置を相対的に補正することで、誤差を±2~3cm程度まで縮小する高精度測位技術

ササニシキとゆうだい21の食べ比べ

── “幻の米”に出会う、贅沢な体験

今回吉成さんが用意してくれたのは、農園を代表する2つのお米。
午前中に精米したばかりの米は白く輝き、炊き上がると香りが広がります。

● ゆうだい21/もちもちした粘り、強い甘み、弾力ある食感が特徴。

岡田さん:「“龍田米”って書いてあるんですが、これは…?」

吉成さん:「うちの“ゆうだい21”のブランド名です。阿武隈川を地図で結ぶと“龍”の形に見えて、天栄村はちょうど“龍の目”。そこから“龍田米”と名付けました。」

愛川さん:「おいしい炊き方を教えてくださいますか?」

吉成さん:「流れる水で5回すすぐのを5セット。夏は30分、冬は40〜50分浸水。一番おいしいのは“研いだまま炊飯釜ごと冷蔵庫で一晩置いて、翌朝早炊き”にするんです。これが本当に美味しいんですよ。ぜひ、試してみてください。」

● ササニシキ/すっきりとした軽さ、ほぐれ感、清涼感のある後味。天栄村で栽培しているのは吉成さんだけ。

ササニシキは“早生(わせ)系”で、いもち病に弱く倒れやすい、とても繊細な品種。でもこの“ほぐれ感”は唯一無二。ふわっと口の中でほどけます。 天栄村の気候と土壌で育つことで甘み・粘りがほどよく加わり、“良いとこ取り”の味わいになるそうです。「同じ品種でも、育てる場所によって味がまったく変わるんですよ。」と、吉成さんは続けて教えてくれました。

継続と挑戦。吉成さんの姿勢が“味”になる

日々続ける緻密なデータ管理と記録。そして、新しい米作りの可能性を探りながら、積極的に挑む姿勢。その積み重ねが、吉成さんの育てるお米の“美味しさ”を確かなものにしています。

吉成さん:「やっぱり“安心・安全で美味しいお米をつくり、みなさんに美味しいと言ってもらうこと”それが僕らの楽しみなんです。」

天栄村の自然と、そして生産者の米作りにかける想いの全てが一粒ひと粒に込められています。

今回の交流会を終えて

今回の訪問で見えてきたのは、どちらにも共通して “美味しさの裏側にある、つくり手の努力”と、揺るぎないデータ分析にもとづく品質づくりがあるということでした。その根っこには、生産者が積み重ねてきた年月と、まっすぐな情熱があります。

池田農場では、酒粕を使った飼育試験を重ね、A5等級率の高さにつながる育て方を確立。日々の管理や、牛一頭一頭と向き合う姿勢が、“「福粕花」のやわらかな食感と甘い香り”を生み出していました。

吉成農園では、震災後の安全性を証明するための取り組みをはじめ、品種ごとのデータ管理、肥料調整、そして設備への投資を惜しまない姿勢が、「ゆうだい21」の美味しさ、そして数々の受賞につながっています。

現場を見て、アンバサダーのみなさんが口にした「想像以上に手間暇かけていることで生まれる美味しさなんですね。」という言葉は、まさに今回の企画の目的そのもの。
“つくり手の顔が見えること”で、福島の食の魅力をより深く伝えていきたい。
ふくしま市場は、これからも福島の食とつくり手の魅力を、アンバサダーのみなさんとともに届けてまいります。

おまけ

新白河駅の近くにある、肉の卸売店あづまやの直営カフェで、「福粕花と麓山高原豚の絶品ハンバーグ」を堪能し、今回の訪問ツアーを締めくくりました。

The SUN CAFE&GRILL
〒961-0856 福島県白河市新白河3丁目54-2

\SNSで投稿いただきました/

\ふくしま市場で販売中/

福島牛・福粕花
(ふくはっか)
ローストビーフ
【IFFA2025 金賞受賞】
株式会社いとうフーズ
福島牛・福粕花
(ふくはっか)
すき焼き用500g
株式会社いとうフーズ
福島牛・福粕花
(ふくはっか)
焼肉用カルビ400g
株式会社いとうフーズ

\今回ご協力いただいた皆さま/

株式会社美土里耕産
代表取締役社長
安達 正則 さん
株式会社美土里耕産
生産事業部 次長
田村 洋基 さん
池田農場
三島木 寿雄 さん
吉成農園
代表 吉成 邦市 さんと
奥様

\参加アンバサダー紹介/

生産者の訪問を終えて…

ふくしま市場公式アンバサダー
まいらぶさん
普段、直接お話しする機会のない畜産農家さん、お米農家さんの声を聞けて、とても新鮮でした。牛を育てる日々のご苦労や、お米づくりへの熱い思いを知ることができました。とても楽しく、充実した時間をありがとうございました。
ふくしま市場公式アンバサダー
岡田 正義さん
スタッフの細かい配慮もあって、とても実りのある訪問でした。生産現場を実際に見られたことが本当に良かったです。実際の現場に触れることで、畜産や稲作にかけられている労力の大きさをあらためて実感しました。また、放射性物質を除去するための努力も印象的でした。とても貴重な体験をありがとうございました。
ふくしま市場公式アンバサダー
愛川 りなさん
福粕花を間近で見られたこと、そしてお米の品種当てクイズがとても楽しかったです。雌牛は喧嘩を避けるために角を切るというお話や、お米が徹底した放射性物質検査によって高い安全性を保っていることを聞き、初めて知ることばかりで印象深い訪問でした。生産者さんの元を訪ねる機会は本当に貴重で、もっと福島の魅力を広めたいという思いが一層強くなりました。